眼瞼下垂とは、簡単にいうとまぶたが下に垂れ下がっている状態のことで、視界が悪くなったり、いつも眠たそうな印象を持たれてしまうなどの影響があります。今回は、眼瞼下垂の種類とその原因、さらには治療方法について解説していきます。ちなみに眼瞼下垂は、医師の判断によって保険適用になる場合とならない場合があるので、治療の際には注意が必要です。
眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは、まぶた(眼瞼)が下に垂れ下がり(下垂)、上まぶたが黒目にかかり見えずらくなっている状態のことです。眼瞼下垂にはいくつかの原因がありますが、大きく分類すると先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂に分けられます。
先天性眼瞼下垂
生まれつき、まぶたを上げる筋肉や腱膜が弱く、まぶたが十分に開かない状態になっています。特に筋肉(まぶたを開く主動筋=上眼瞼挙筋)の一部、または全体が欠損していることが多いです。両目の場合もあれば、片目だけの場合もあります。
後天性眼瞼下垂
先天性眼瞼下垂以外の眼瞼下垂がこれに当てはまりますが、後天性眼瞼下垂にはいくつかの種類があります。それぞれの種類についてはこのあと解説します。

眼瞼下垂の原因
まず、まぶたが開くメカニズムについてですが、まぶたを持ち上げるには、非常に薄い眼瞼挙筋・ミュラー筋・前頭筋と呼ばれる3つの筋肉の力が関与しています。この眼瞼挙筋が収縮することで、腱膜とミュラー筋を介して瞼板を持ち上げると、ようやくまぶたを開けることができます。これらを踏まえて、眼瞼下垂の原因について解説していきます。
①筋原性下垂(筋肉が原因の眼瞼下垂)
筋原性下垂とは、まぶたを開ける筋肉自体に障害が出ることにより生じる眼瞼下垂のことです。ほとんどは加齢が原因となります。非常にまれですが、筋ジストロフィーなど筋肉の変性する病気から、眼瞼下垂を発症することもあります。
②腱膜性下垂(筋肉からまぶたへ力を伝える膜がゆるむための眼瞼下垂)腱膜がゆるむ
まぶたのキワにある瞼板を持ち上げる役割を持つ眼瞼挙筋ですが、この二つを繋ぐのが挙筋腱膜とミュラー筋です。腱膜性眼瞼下垂とは、この挙筋腱膜とミュラー筋にゆるみが生じ、眼瞼挙筋の力を上手に瞼板に伝えられないことで起きてしまう眼瞼下垂のことです。
③神経原性下垂(神経が原因の眼瞼下垂)神経がだめになる
動眼神経麻痺など、脳梗塞や脳腫瘍などにより、動眼神経という、まぶたや目を動かす神経に麻痺が起きると眼瞼下垂になってしまします。片方の目だけに起きることが多く、ものが二重に見える「複視」という症状も出現します。他にも、夕方になるとまぶたが重くなる重症筋無力症が原因のこともあります。
④偽性眼瞼下垂・上眼瞼皮膚弛緩症→まぶたの皮膚が緩み、皮膚がかぶさってきてしまう
まぶたを開ける筋肉や神経は正常でも、長年使ってきたことにより、まぶたの皮膚にたるみが生じ、まぶたは空いているのに皮膚が覆い被さってしまい、瞳孔が隠れてしまうといった眼瞼下垂のことです。
後天性眼瞼下垂はこれらのうちいくつかを複合的に発症している場合もあり、特にご高齢の方の場合は老人性眼瞼下垂と呼ばれる腱膜性下垂と偽性眼瞼下垂の組み合わせで引き起こる眼瞼下垂の場合が多いです。
眼瞼下垂の治療
眼瞼下垂を治療しようとする場合、内服薬や注射による治療はあまり効果が期待できないことが多いため、原則としては手術による治療が望ましいです。ここでは、手術による眼瞼下垂の治療について解説していきます。
挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)
挙筋前転術とは、挙筋腱膜が緩んでしまい、上まぶたを持ち上げる筋肉の力がうまく伝わらないために起きる、腱膜生眼瞼下垂の方に適用となる手術方法です。二重の線をメスで切開し、伸びてしまった挙筋腱膜を前方に縫い付けることで固定し、それにより腱膜が短くなり、手術前よりもまぶたを引き上げる力を強くさせる方法です。切開したところから同時にたるんだ皮膚を切除できるので、偽性眼瞼下垂もある方に適用できます。
前頭筋吊り上げ術(ぜんとうきんつりあげじゅつ)
まぶたを持ち上げるのに必要な3つの筋肉のうち、眼瞼挙筋とミュラー金が非常に弱っている、または神経麻痺により動かなくなっている場合、もう一つの筋肉である前頭筋の力でまぶたを持ち上げる方法があります。前頭筋は、本来眉毛を持ち上げることがメインの筋肉であるため、まぶたを持ち上げるためには、前頭筋を直接まぶたと紐のようなもので繋ぐことで、前頭筋の力が直接まぶたに伝わり、おでこの力でまぶたを持ち上げやすくさせる方法です。
余剰皮膚切除術(よじょうひふせつじょじゅつ)
偽性眼瞼下垂の場合に適した手術方法で、この場合はまぶたを持ち上げる機能には問題がないことが多いため、たるんでいる余った皮膚を切除することで症状がよくする方法です。切除する部分としては、二重の線で切り取る「重瞼線切除(じゅうけんせんせつじょ)」と、二重のラインが乱れないように眉毛の下のラインで切除する「眉毛下切除(びもうかせつじょ)」の2パターンがあります。
保険適用治療には美容目的はNG
眼瞼下垂の手術では、美容的な側面がメインと考えられる場合、保険が適応とならず自費治療となることがあるため、保険適用内の治療を受けるには「機能的に問題がある」「見た目だけでなく、実際の生活に支障をきたしている」ことが条件となるので注意が必要です。
眼瞼下垂手術のポイント/メリット
ここでは、眼瞼下垂治療手術を行うことによるメリットをご紹介します。
眼瞼下垂の症状が良くなると、頸部を後屈する姿勢が良くなり、肩こりや眼精疲労が改善する場合があります。
形成外科専門医が手術を行うため、機能的な問題を解決する他にも、整容的にも美しく手術・治療することが可能です。(例:手術前よりも目がぱっちりと大きく見える。など)
保険適用ない治療と判断された場合は、健康保険が適応され治療費の自己負担が少なくなる場合があります。
エルディアクリニックの眼瞼下垂手術のポイント
ここでは、当院で扱っている眼瞼下垂手術についてご紹介していきます。
眼瞼下垂手術の流れ
眼瞼下垂と診断された場合、日帰りでの局所麻酔手術をご案内させていただいております。これは、眼瞼下垂症という病名に対する、眼瞼下垂症手術という名前の保険適用での手術になります。
手術後当日:処方された薬を服用し、安静にしてください。
手術翌日:洗顔、シャワーをしていただいて問題ありません。
1週間後:抜糸を行います。
約3ヶ月後:手術部位の最終確認をして完了となります。
眼瞼下垂手術の費用(保険適用の場合)
ここでは、当院で扱っている眼瞼下垂手術の費用についてご紹介します。補足ですが、保険適用の場合、全国どこのクリニックでも価格は同じなので、自費診療をしっかり行なっている信頼のできるクリニックにて眼瞼下垂の手術を受けられることをおすすめします。
エルディアでは、上記で紹介している3つの眼瞼下垂手術は提供しているのでしょうか?ここで紹介する施術内容が上記に該当しないと少し混同するかと思いました。
「保険適応・両側の場合」
・眉毛下皮膚切除術【びもうかひふせつじょじゅつ】(皮膚のみの手術)
1割負担でおおよそ13,000円 3割負担でおおよそ40,000円
・眼瞼下垂症手術(筋肉を扱う手術)
1割負担でおおよそ15,000円 3割負担でおおよそ45,000円
※片側の場合、手術費用は半分になります。
副作用・注意点について
ここでは、眼瞼下垂治療手術を行うことによるメリットをご紹介します。
眼瞼下垂の症状が良くなると、頸部を後屈する姿勢が良くなり、肩こりや眼精疲労が改善する場合があります。
・手術後1日〜1週間ほどは腫れるので、運動や飲酒等はお控えください。
・手術後2週間ほど内出血が続くことがあります。
・手術後2〜3ヶ月は傷跡に赤みが続くことがあります。
眼瞼下垂手術まとめ
眼瞼下垂には先天性のものと、後天性のものがあり、後天性の中にもさらに種類があることがご理解いただけたかと思います。眼瞼下垂の治療は主に手術がメインですが、特に注意していただきたいのが、担当医師の判断により、保険適用となる場合とならない場合があるので、しっかりと担当医師と相談をして治療をされることが大切です。

参考文献
「形成外科診療ガイドライン」
https://jsprs.or.jp/docs/guideline/keiseigeka6.pdf
https://www.matsuyama-shimin-hsp.or.jp/department_info/department_info-2114/https://www.jscmfs.org/guideline/volume6.htmlhttps://www.matsuyama-shimin-hsp.or.jp/department_info/department_info-2114/https://www.nms.ac.jp/kosugi-h/section/plastic-surgery/guide_copy_2_copy_copy_2_copy_2.htmlhttp://www.matsuo-eyelid.com/15342293220431